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皆もすなるブログといふものを、私もしてみんとてするなり。
という訳でまともな更新です。といっても骨格が完成したに過ぎませんが。

さて、過去の作品を載せようと思ったら余りの稚拙さに絶望し、
じゃあどうしようかと考えた結果、先に新作を書く運びになりました(ノ∀`)アチャー
ホントはやることが色々あった気もしますが、まずは一歩を踏み出そう、と。

それでは、お楽しみ下さい。



「夜の散歩」

 休日の小学校。人っ子一人いない夜。そんな時間に、一匹の猫が入り込んだ。空から照らす三日月は暗く、遠くの夜景は屋上から見れば素晴しい眺めなのだろうが、それが出来ない猫にとっては星の一つさえ霞んで消えていくのが、ちょっと不満だった。
 猫はひょいと窓枠に飛び乗って、誰もいない教室を覗く。まん丸の瞳を更に大きく押し開いて中を詳しく見てみると、薄ぼんやりと何かが浮かんで見えた。どうやら誰かの置き忘れた筆入れらしい。
 正体が分かると、ペンを持てない猫は急激に興味を失い、窓枠から飛び降りて次の探検へと向かった。
 優雅に歩く一匹の猫。もし人間が見かけたら、金持ちの飼い猫かと思うだろう。だが彼は違った。人間社会から解き放たれた一匹の自由なけものは、身に与えられた幸福と不幸を一心に噛み締めながら、次なる場所へと向かった。
 彼は誰にも拘束されず、それ故に今日も昨日も腹ペコだった。

 彼が給食室の前を通りかかった時、えも言えぬ芳香が漂ってきた。人間が食べ物を作る場所だと彼は知っていたから、その場所は敢えて無視して先に進んだ。
 彼にとって、人間とは干渉されず、そして干渉しない生きものの一つだった。それは、近所の犬や雀や鴉にも同じことが言えた。
 給食室を回り込んで音楽室の方へ向かうと、広葉樹の広がる林がある。そんなに広くはない上に何者かが先にとって行くことも多い。だが、残飯などを漁る界隈の猫たちに言わせるところの、カレー、そう人間に呼ばれているらしい不思議な食べ物を口にするよりは、よっぽど彼の美学に叶っていた。

 彼は優雅な散歩を終らせる気はまだなかったが、誰もいない夜の音楽室からピアノが聞こえてくる訳でもないし、その先のコンピューター室といったか、そこに至っては訳の分からぬテレビのようなものや沢山の線が並んでいいて、甲高い音が始終響いてるものだから頭が痛くなり、近付きたくもない。
 そして何より、彼はけものであるが故に給食室の匂いに食欲を刺激され、我慢の限界が近付きつつあったのだ。
 彼はけものであることに誇りを持っていてもけだものに成り下がることはできなかった。だから、彼は欲に全てを囚われる前に、雑木林へサッと入っていった。

 学校は今度こそ猫の子一匹居なくなる程の静寂に包まれ、物言わぬ世界は静かにその目を閉じた。

[終]

[文責] 掘江弘己





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テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

 

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