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 ある休日のことである。当時大学は夏休みであり、キャンパスから非常に近い友人宅に入り浸るのが、私たちのグループでは当たり前のように行われていたことだった。
 その日、友人宅で麻雀を数時間やりこみ、一息ついたところで揃って大学近くの定食屋に行くと、三軒ある店のうち一軒、Mが閉まっていた。
 もう日付が変わろうとしていたから、もう店仕舞いをしたのかと思い、その日はさほど気にも留めず隣の店、Sへ入った。
 一番人気の定食は、やはり美味しかった。食べ終った後再び友人宅に戻り、麻雀に傾倒した。帰ろうと思った頃には、もう朝だった。

 そして、それから数週間が経った平日のこと。
 夏休みも終り、久方ぶりに友人と会ったところ、こんな話を聞いたのである。
「あの定食屋M、閉店したらしいよ」と。
 青天の霹靂であった。何せ、その店は最も懇意にしていた店だったのだ。週末にサークル活動を終らせ、学食の灯火が消えた後に訪れる定食屋Mは、私の憩いの場だった。
 そういえば、30年も営業していたと聞く。もう、店主の体力が限界なのだろう。

 私はその日から、早く帰るようになった。Mのない夜の大学は、どことなく冷たい風が吹く。
 MやSのある通りにある別な中華料理屋に行ったが、やはりMには敵わなかった。
 もしもう一度あそこに通えるならば、全ての友人を一同に押し込んで、わいわいと騒ぎたいものだ。あの大味で莫迦のような量の食事を、是が非でも味わせてやるのだ。

[文責] 掘江弘己
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テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

 

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